本文へスキップ
AI活用

広告クリエイティブをAIで分析する|動画は渡す前にテキストにする

文・編集:ワークデイズ合同会社


動画広告を回していると、「どの動画にいくらかかったか」は数字で出ます。ところが「なぜその動画が勝ったのか」は、たいてい担当者の印象の中にしかありません。

私たちは、動画の音声をテキストにして実績と並べることで、ここを数字にしました。ただし、動画をそのままAIに渡すと1本で約2万8千トークンかかり、30本ぶんを1回のやりとりに載せるには重すぎます。渡す形を変えて、およそ80分の1にしています。この記事では、その作り方と、そこで分かったことを書きます。

動画広告をAIで分析できる形にする流れの図解。実績の数字と動画の中身がつながっていない状態から、音声を抜き出して秒数つきの台本テキスト(1本 約530トークン)にし、実績と結合した一覧表にして、8つの要素が何秒に出るかを機械的に分解するまでの4段階。下段に「テキストにすると、一度きりの分析で終わらない」と添えている。

「なぜ勝ったか」だけが、データになっていなかった

まず、困っていたことから書きます。

広告の管理画面を開けば、動画ごとの費用・CV(申込や購入といったゴール)・CPA(1件あたりの獲得単価)・CTR(表示に対してクリックされた割合)は出てきます。数字は揃っているのです。

揃っていないのは、その動画が何を言っていたかでした。台本は制作会社との共有フォルダにあり、実績とは別の場所にあります。だから「この動画が勝った理由」を聞くと、たいてい「冒頭が良かったと思う」「テンポが良かった気がする」という話になります。

40本、100本と増えていくと、この状態はきつくなります。印象で「これが良かった気がする」と言い合う会議になり、次に何を作ればいいかが決まりません。

やることは単純です。動画の中身をテキストにして、実績の隣に置く。それだけで、機械的に分解できるようになります。

そのまま渡すと、30本で85万トークン

ところが、ここで壁にぶつかりました。最初は、コストの問題だと思いました。

AIとのやりとりでは「トークン」という単位で分量を数えます。読ませた分も書かせた分も、そのまま料金に効いてきます。

何も工夫せず、動画にまつわるデータをそのままAIに渡すとどうなるか。私たちが実測したところ、広告媒体から返ってくる動画の情報を丸ごと受け取って約6,000トークン、コマ画像を原寸のまま8枚読ませて約22,000トークン。あわせて1本あたり約2万8千トークンでした。30本回せば85万トークン規模になります。1回のやりとりに載せるには、これは重すぎます。

いくらかかるのか

トークンの数だけでは実感が湧かないので、お金に直します。

料金はモデルによって大きく違います。ここでは各社が公表している標準価格を使い、1ドル160円で換算しました。2026年8月時点、読ませる側(入力)の料金で、キャンペーン等の期間限定割引は含みません。トークン数は私たちが使った環境での実測で、画像の数え方はモデルによって多少変わります。

いろいろな会社のモデルを横並びで比べたいときは、OpenRouterのようなサービスが便利です。

モデル100万トークンあたり30本をそのまま渡す(85万トークン)形を変えた場合(1.1万トークン)
Claude Fable 5約1,600円約1,360円約18円
Claude Opus 5 / GPT-5.6 Sol約800円約680円約9円
Claude Haiku 4.5約160円約136円約2円
GPT-5.6 Luna約32円約27円約0.4円

いちばん安い行といちばん高い行で、50倍の開きがあります。同じ作業でも、どのモデルに読ませるかで50倍変わるということです。モデルを自分で選べること自体の価値は「AI SaaSの料金は何に払っているのか」に書きました。

正直に書くと、金額そのものは大した額ではありません。いちばん高いモデルでも1,360円です。

効いてくるのはお金ではありませんでした。85万トークンは、1回のやりとりに載せるには重すぎます。載らなければ、分析そのものが始まらない。ここが本当の壁です。

もちろん本数が増えれば話は変わります。毎月300本を見るなら、単純に10倍です。

重さが壁だと分かったとき、まず思いつくのは「もっと軽いモデルを使えばいいのでは」という発想だと思います。私たちもそう考えました。

軽いモデルに替えても、渡すものは変わらない

結論から言うと、これは効きませんでした。

理由は2つあります。

文字起こしの部分は、すでに削る余地がありませんでした。音声認識は外部のサービスで済ませているので、AIが読むのは結果のテキストだけです。1本あたり約530トークンしかありません。

そして画像は、安いモデルに替えても小さくなりません。画像のトークンは、モデルの賢さではなく絵の面積(ピクセル数)でおおむね決まります(数え方はモデルによって多少違います)。単価は下がっても、こちらが渡す絵の大きさは変わりません。減らしたいなら、モデルではなく画像そのものを小さくするしかない。しかも画像の読み取りこそ精度が要る場面なので、そこを軽くするのは得策ではありません。

削るべきは「モデル」ではありませんでした。渡すデータの形です。

削るのは、渡すデータの

同じ動画1本でも、渡し方でこれだけ違います。

渡すものトークン(すべて概数)
媒体から返る動画の情報をそのまま約6,000
コマ画像を原寸で1枚約2,800
同じものを18枚約50,000
原寸のまま8枚約22,000
同じ8枚を小さくして1枚に畳む約1,000
文字起こしの全文(秒数つき)約530
小さくした画像3枚+表紙1枚(静止画しか取れない場合)約690

効いた順に3つ書きます。

いちばん効いたのは、必要なものだけを取りに行くことでした。MCP(AIと外部サービスをつなぐ既製の接続の仕組み)を経由すると、こちらが指定していない項目まで毎回返ってきます。使わないサムネイルのURL18本分などを含めて、1本あたり約6,000トークン。自分で必要な3項目だけ取りに行くと約600トークンになります。しかも取得から加工までをプログラムの中で終わらせれば、AIには1トークンも入りません。削る幅の大きさより、ゼロにできることのほうが大きい。ここだけは、工夫すれば完全に消せます。

次が、画像を原寸で読ませないことです。8コマを横1024ピクセルの1枚にまとめました。約22,000が約1,000になりました。およそ21分の1です。

ただし、ここで効いているのは「1枚にまとめたこと」ではありません。画像のトークンは、枚数ではなく絵の面積(ピクセル数)でおおむね決まります。私たちが使った数え方なら、8枚の絵を原寸のまま1枚に並べても面積は変わらないので、トークンの量もほとんど変わりません。

効いているのは、まとめるときに1コマずつ小さくしていることです。横1024×縦768ピクセルの1枚に4列2段で並べたので、1コマが占める面積は約256×384ピクセルぶんです。原寸は1080×1920でした。面積でおよそ21分の1。だから8枚ぶんでも約1,000で済みます。

構成を追う目的なら、この大きさで情報はほとんど落ちません。

最後が、全部を画像で見ないことです。ここは段階を分けました。

段階対象渡すもの
1段目全本プログラムが処理して、実績と結合した一覧表だけ。AIは表しか読まない
2段目上位・下位10本前後文字起こしの全文(1本 約530トークン)
3段目2〜3本だけ畳んだ画像。音声では分からないこと(見せ方・装飾・実写かどうか)に限定

3つを合わせて、30本でおよそ1.1万トークンになりました(1段目で読む一覧表のぶんも含みます)。何も工夫しなかった場合の85万に対して、80分の1です。

数字を仕組みの側で固めて、AIには解釈だけをさせる。この考え方は「AIレポートの精度はモデル選びでなく仕組みで決まる」や「AIの数字はなぜ間違うか」でも書いてきたことと同じです。

動画30本を3段に分けて分析する図解。1段目は全30本をプログラムだけで処理し、AIには動画を渡さず結合済みの一覧表だけを読ませ、2段目は成績の上位下位10本前後の文字起こし全文を1本約530トークンで読み、3段目は2〜3本だけ8コマを小さくして1枚に畳んだ画像を約1,000トークンで見る。合計およそ1.1万トークンで、工夫しない場合の85万の約80分の1になる。

そして、削減とは別のところに、長く効いてくるものがありました。文字起こしは一度取ればファイルとして残ります。動画は後から変わらないので、取り直す必要がありません。回を重ねるほど、過去のクリエイティブがテキストの資産として積み上がっていきます。横断して検索するのも、前回との差分を見るのも、追加の手間なくできます。

動画の冒頭は、映像より音声のほうが正確に取れる

作っている途中で、想定していなかったことが分かりました。

短い動画は冒頭2〜3秒で決まる、とよく言われます。では、その2〜3秒をどうやって観測するか。最初は映像から見ようとしました。3秒おきに切り出したので、1枚目は3秒地点です。

そこには「そう思っていませんか?」というテロップが写っていました。これが冒頭のつかみ(フック)だと考えるのが自然です。

ところが音声を取ってみると、その手前の0.00〜2.52秒に、まったく別の一言がありました。「◯◯なんて結局効かないじゃないか」という問いかけです。本当のフックはこちらでした。映像だけを見ていたら、取りこぼしていたことになります。

画面を細かく切り出しても、テロップになっていない発話は映像に映りません。音声なら0秒から連続で取れます。冒頭の数秒を見るなら、映像より音声のほうが取りこぼしが少ない。これは作ってみるまで分かりませんでした。

あわせて、テロップと音声はお互いの検証材料になります。音声認識は固有名詞や語尾を間違えます。テロップは要約されていて全文ではありません。同じ動画から両方取れるので、突き合わせれば確定できます。

音声認識のモデルは、1つでは足りませんでした

ここは少し細かい話になります。仕組みの中身に関心がなければ、次の見出しまで読み飛ばしても構いません。

日本語の精度が高いモデル(whisper large v3 turbo)を使ったところ、秒数がまとまって返ってくることがありました。27秒の動画が「0.00〜27.14秒」の1行になってしまい、冒頭3秒を切り出せません。冒頭を見たいのに、冒頭が取れないのです。

一方、素のwhisperは単語ごとに秒数を返してくれます。ただし日本語の精度が落ちます。「使いかけのコスメ」が「使いかけ残すめ」になる、という具合です。

そこで、本文は精度の高いモデルから、秒数は単語ごとに返すモデルから取り、文字の位置を突き合わせて秒を割り当てることにしました。2回呼ぶぶんコストはかかりますが、どちらか片方では成立しませんでした。

「AIに任せた」と一言で言っても、実際にはこういう継ぎ足しが要ります。一度で綺麗に決まることは、あまりありません。

勝った系統は、2秒以内にユーザーベネフィットを言い切っていた

テキストになると、機械的に分解できます。

私たちは台本の中から、8つの要素がそれぞれ何秒時点で出てくるかを拾いました。ユーザーベネフィット(=見ている人にとっての得)を断定する台詞、手順の説明、他の手段との比較、ブランド名の初出、お金以外のベネフィット、一人称の体験談、キャンペーンの案内、そして最後の呼びかけです。

そのうえで、ある案件の動画40本を冒頭の言い回しで9つの系統に分類しました。

分かったのは、費用の96%が2つの系統に集中していたことです。しかもその2系統は、商材と性別を差し替えただけの、ほぼ同じ骨格でした。2年をまたいで別のアカウントで同じ形が回り、どちらもCVが付いていました。

成績が付いた系統には、共通点がありました。

  • 2秒以内に、ユーザーベネフィットを言い切っている
  • 尺が25〜30秒に収まっている
  • 冒頭の主語が「あなたの持ち物」になっている
  • 一人称の体験談が入っている
  • 最後に「◯◯したい人は」と対象を名指ししている

対してCVがゼロだった系統は、尺が48秒と倍ありました。冒頭が売り手側の要望(「売ってください」)から始まり、前半15秒が市場の説明に使われていました。そして、ユーザーベネフィットを断定する台詞が台本に存在しませんでした。お金の話は手順説明の中に埋もれ、見ている人にとっての結論が最後まで出てきません。

台本を分解して比べた図解。動画40本を冒頭の言い回しで9系統に分類し、費用の96%が集中した系統と、CVが付かなかった系統を、尺・冒頭・中身・終わりの4項目で左右に並べている。下段に「これで『効かない型』が証明されたわけではありません」という留保を添えている。

ただし「証明された」とは言いません

ここは正直に書いておきたいところです。

いま並べた共通点は、方向としては信じてよいと思っています。ただ、「だからこの型は効かない」と断定できる材料ではありません

理由は2つです。

負けた系統は、そもそも試した量が少なすぎました。合計でも1万円前後で、しかも複数の系統に分かれています。1系統あたりで見込めるCVは1件程度です。この規模なら、実力が同じでもゼロになることは普通に起こります。少ない回数の結果を実力の差と読むのは、無理があります。

そして、勝った系統と負けた系統は一度も同時に走っていませんでした。片方は前年で、もう片方は今年です。アカウントも、狙っている相手も、商材の言い方も違います。台本以外に違うものが多すぎて、台本のせいだとは言えません。

比べてよいのは、使った金額も、配信が慣れてくるまでの期間も揃った区間だけです。

分類で分かるのは傾向までです。そこから先は仮説で、次に作る素材で確かめるしかありません。データが増えると、言い切りたくなります。言い切れる条件を先に決めておかないと、たまたま出た差を法則だと思い込むことになります。

明日からできること

自分のところで試すなら、この3つからです。

  1. 過去の広告素材を、テキストにして実績の隣に置く:動画なら台本の書き起こし、バナーなら文言で構いません。「どれが効いたか」の表に「何を言っていたか」の列を足すだけで、見え方が変わります。
  2. AIに渡す前に、形を変える:画像を原寸で何枚も渡さない。1コマずつ小さくして1枚にまとめる、あるいはテキストにする。同じ内容でも、渡し方でコストは数十倍変わります。
  3. 傾向が出たら、言い切れる条件を先に決める:「何本ためたら判断するか」「同じ条件で比べられているか」を先に置いておく。出てから決めると、都合よく読んでしまいます。

効いてくるのは、浮いた費用そのものではありません。1回のやりとりに載せられる重さかどうかで、その分析が成立するかしないかが決まります。そして印象で「これが良かった気がする」と言い合っていた会議が、次に何を作るかを決める会議に変わります。

これは動画に限りません。PDFの資料も、会議の録音も、写真の束も同じです。そのまま渡すのがいちばん重いというのは、AIを業務で使うときに共通します。

まとめ

広告クリエイティブは長いあいだ、数字の外側にありました。効いたかどうかは分かっても、なぜ効いたかは印象の中にあった、ということです。

音声をテキストにして実績と並べるだけで、ここは分解できるようになります。特別な発明はしていません。詰まるのは渡し方のほうで、そこは「軽いモデルにする」ではなく「渡す形を変える」で解けました。80分の1になり、しかもテキストは資産として残ります。

そして、見えた傾向をどこまで言うか。私たちは断定しないことにしました。揃っているように見えても、片側しか試せていないことがあります。そこを確かめてから言う——この順序だけは、AIを使っても変わらないと思っています。

CONTACT

同じような課題、ありませんか?

広告アカウントとアクセス解析を全件精査するWebマーケティングのAI分析を、月3社まで無料で受け付けています。

24時間365日 ご相談受付・月3万円〜

無料で相談する

24時間365日 受付・月3万円〜