CMS選びは「最新」より「使い続けられるか」|自社で選んでわかった判断軸
サイトを自分たちで更新する仕組み——CMS。これを「最新・高機能だから」で選ぶと、あとでコストや乗り換えに苦しみます。私たちは自社サイトのCMSを、自作のデータ管理から始め、いくつか試した末に、Git(バージョン管理)と連携する仕組みに落ち着きました。結論はシンプルです。CMSは機能の多さではなく、「使い続けられるか・自分たちで回せるか・コンテンツが手元に残るか」で選ぶ。 本記事は、実際に選び直してわかった判断軸と、中小企業が踏みやすい落とし穴を、率直に共有します(本シリーズの一編。全体像は「自社サイトをAIネイティブで作り直した全体像」を参照)。
CMSは「最新・高機能」より「使い続けられるか」で選ぶ
選定でいちばん大事なのは、最新の機能ではなく「誰が・何を・どう更新し続けるか」です。
CMSの比較記事は世にあふれていますが、多機能なものを選んでも、自分たちの運用に乗らなければ意味がありません。実際、選定の早道は「ヘッドレスCMSが過剰か」と悩むことではなく、「誰が何を更新するか」を最初に決めることだと指摘されています(CX Clip/KARTE)。ここが決まれば、選択肢はかなり絞れます。
私たちも、新しさより「今ある運用にそのまま乗るか」を優先しました。すでに回っている仕組みを活かせるほうが、結局いちばん速く・安く・続けやすい——これは自社サイトでも、お客様の支援でも一貫した実感です。
中小企業が踏みやすい、3つの落とし穴
選ぶ前に、つまずきやすい点を3つ挙げます。どれも、最初の比較表だけ見ていると見落とします。
1. コストの“段差”
多くのCMSは無料や安価から始められます。けれど、チームで使う「権限分離」——たとえば入稿は担当者、公開は責任者、といった承認フロー——になると、一段上の有料プランが必要になることがあります。たとえば国産の microCMS は無料プランも用意されていますが、権限管理はBusinessプラン以上の機能です(microCMS 料金/権限管理)。入口の安さだけで決めず、「自社に必要な機能が、どのプランで乗るか」まで確認するのが大事でした。
2. 提供元の都合で、土台が揺らぐ
外部サービスに頼る以上、仕様変更やサービス終了のリスクは避けられません。実際、多くのGit連携CMSが認証に使ってきた Netlify Identity が非推奨になり、それに依存していたCMS(Decap など)の認証の土台が揺らぐ、という出来事がありました(Decap CMS の議論)。自社のコンテンツや運用が、外部の都合に左右されうる——この目で見ておく必要があります。
3. 「CMSを入れればSEOに強くなる」は誤解
これはよくある誤解です。検索の評価は、最終的に出力されるHTML・表示速度・中身の質で決まります。どのCMSを使うか(あるいは使わないか)そのものが、順位を上げ下げするわけではありません。出力が同じなら、SEO上の差はつきません。CMSは「更新のしやすさ」の道具であって、SEOの魔法ではない、と捉えるのが正確です。
私たちの選び方:コンテンツが“手元に残る”ことを最優先に
最終的に私たちは、コンテンツが自分たちの手元(リポジトリ)に、ファイルとして残る方式を選びました。理由は3つです。
- 提供元に依存しない:サービスの仕様が変わっても、コンテンツは自分たちの手元にある。
- AIで運用しやすい:記事がファイルなので、AIで作る・直す・整える流れにそのまま乗る。
- 更新がそのまま公開につながる:保存すれば自動でサイトに反映される。
ただし、これは「どのCMSが優れているか」という話ではありません。用途で選ぶのが正解です。たとえば「エンジニアが関わらず、純粋に管理画面だけで運用したい」なら、国産で日本語サポートも手厚いAPI型(microCMS など)が合います。私たちは“AIネイティブで運用する”という前提だったので、Git連携が合った——それだけのことです。だからこそ、最初の問い「誰が・何を更新するか」に戻ります。
ここから先は、実際にどのCMSを試し、なぜ移ったのかという技術的な詳しい話です。仕組みに関心がなければ、最後の「まとめ」まで読み飛ばしていただいてかまいません。
試したCMSと、移った理由(技術的な詳細)
私たちがたどった順序と、その判断です。
- 自作のJSON管理:最初はCMSを使わず、データを自前のファイルで管理。手は速いが、記事が増えると編集や整合性の維持がつらくなる。
- Decap(保留):リポジトリにMarkdownでコンテンツをためられるGit連携CMS。ただし認証に使われてきた Netlify Identity の非推奨化で、土台に不安があり保留。
- microCMS(検討):国産の優れたAPI型CMS。コンテンツを管理画面で扱えて非エンジニアにやさしい。一方で、コンテンツが自分たちのリポジトリの外に置かれる形は、AIネイティブで回す方針とは相性が分かれた。権限分離にBusinessプランが要る点も、用途次第で効いてくる。
- Sveltia(採用):Gitベースで、コンテンツはリポジトリ内のMarkdownとして残る。AIでの制作・運用とそのまま噛み合う。管理画面(
/admin)はGitHubのトークン認証でログインし、保存すると自動でコミット→ビルド→公開まで流れる。
このサイトでも、設定を実態(リポジトリ構成)に合わせて直し、トークンでのログインまで実際に通しました。「保存=コミット=公開」という一本道が、AIで回す運用と素直につながっています。なお、microCMS は今も良い選択肢で、上で書いた“純粋に管理画面で運用したい”ケースの第一候補です。私たちの方針に対してGit連携が合った、という整理です。
この「コンテンツが手元に残る」という発想は、運用の土台を外部に預けない、という設計思想でもあります。全体像は「自社サイトをAIネイティブで作り直した全体像」にまとめています。
まとめ:CMSは「出口」ではなく「続けられる仕組み」で選ぶ
最後に、判断軸をもう一度。
CMSは、機能の多さや新しさではなく、「続けられるか」で選ぶものでした。具体的には——①誰が・何を更新するかを先に決める ②自分たちで運用を回せるか ③コンテンツが手元に残るか ④必要な機能がどのプランで乗るか(コストの段差)⑤提供元の継続性。この5つを押さえれば、流行りのツール名に振り回されずに選べます。
中小企業にとっての含意はシンプルです。最新を追うより、自分たちが続けられる形を選ぶ。サイトは作って終わりではなく、更新し続けてこそ意味があります。だからこそ、出口の機能比較ではなく、「続けられる仕組みか」で選ぶのが、遠回りのようでいちばん確かでした。