目標CPAを一律にするな|受注率・LTVで広告予算を最適化
文・編集:ワークデイズ合同会社
広告の成果を、CV(コンバージョン=申込や購入といった、ウェブ上のゴール)の数だけで見ていないでしょうか。同じ「1件」でも、その先の受注率やLTV(顧客生涯価値=一人の顧客が取引を通じて生む売上)は、媒体やクリエイティブで大きく変わります。CVの手前だけを見て「CPA(1件あたりの獲得単価)が高いから」と予算を絞ると、本当は割に合っていた枠を、みすみす切ってしまう。これが広告の機会損失です。
私たちは、CVの“その先”——受注率やLTV——までクリエイティブに紐づけて、予算の配分を決めています。断っておくと、これは新しい発明でも、AIだからできる話でもありません。もともとやってきた分析を、AIで一段細かく・速く回せるようになった、という話です。
「目標CPA一律」が、静かに機会損失を生む
多くの現場では、目標CPAを媒体やクリエイティブによらず“一律”で決めています。「CPAは◯円まで」と一本の線を引く。分かりやすいのですが、ここに落とし穴があります。
CVの先=受注率やLTVは、枠によって大きく変わるからです。CPAが高い枠でも、そこから来るお客様のLTVが高ければ、事業としては十分に割に合う(=もっと払ってよい)。逆に、CPAが安く見える枠でも、LTVが低ければ、実は払いすぎかもしれない。その広告が“良い”かどうかは、CPAという入口の単価だけでは決められません。
だから打ち手は、目標CPAを「上げる」だけではありません。見合わない枠は下げる、止める、という判断も同じように起こります。広告は集客の“攻め”の一手ですが、攻めだけを最適化しても事業は回りません(その全体像は集客と業務効率化は、一人で回すで書いています)。
CVの“先”を紐づけて、枠ごとに目標CPAを変える
やること自体はシンプルです。受注率やLTVといったCV以降のデータを、媒体・クリエイティブ・顧客の共通キー(同じお客様だと分かる目印)でひとつに紐づける。そして「どのクリエイティブから来たお客様が、CVの先まで見て良いのか」を確かめます。それが分かれば、目標CPAを枠ごとに変えられる——これが、適切な予算配分の中身です。
一例を挙げます。ある案件で、YDA(Yahoo!のディスプレイ広告)はCPAが高く、私たちは予算を抑えようとしていました。ところがCVの先を見ると、YDA経由のお客様はLTVが良い。事業としてはむしろ効率が良かったのです。そこでYDAだけは、目標CPAを高め(=多く払ってよい枠)に設定していました。CPAの高さだけで切っていたら、この売上は取り逃していたはずです。ここまでは、AIを使う前からやっていた判断です。媒体の単位でなら、目視でも追えます。
AIで、「要素」まで・速く・大量に
では、AIは何を変えたのか。変えたのは、その“きめ細かさ”です。媒体の単位までなら目視で追えても、複数の媒体にまたがる大量のクリエイティブを、一つひとつ、しかも中の要素まで分けて見るのは現実的ではなく、できても四半期に一度ほどでした。
ここがAIで変わりました。クリエイティブを“訴求要素”(打ち出すメッセージや見せ方の一つひとつ)まで分解し、それぞれが受注率・LTVにどれだけ効いているかを可視化する。手作業では追えなかった粒度と量を、速く、高い頻度で——極端に言えば日次でも——回せるようになりました。
先ほどのYDAは、“媒体の単位”で見た話でした。続きは、AIで見えてきた部分です。クリエイティブの中まで下ろすと、「YDAが一律に良い」のではありませんでした。YDAの中の“特定のクリエイティブ”が、飛び抜けてLTVの良いお客様を連れてきていたのです。そこで、そのクリエイティブは目標CPAをさらに上げ、LTVが振るわないバナーは他の媒体と同じ目標CPAに戻す。この整理だけで、YDA全体の予算を約3割増やせて、獲得件数も売上も大きく伸びました。派手なことは何もしていません。予算を、正しい枠へ寄せただけです。
この「数字は仕組みで固め、判断は人が持つ」という進め方は、AIに広告運用を任せる=“育てる”や計算はAIでなく計算機にやらせるにも通じます。
明日からできること
自分の広告に取り入れるなら、まずこの2つからです。
- 広告をCVで止めず、“その先”を1つ紐づけて見る:受注率やLTVを、まずは一つの媒体・クリエイティブでいいので、CVに紐づけて眺めてみる。「CVは多いのにLTVは低い」「CVは少ないがLTVは高い」という枠が、たいてい見つかります。
- 目標CPAの“一律”をやめる:LTVの高い枠は目標CPAを上げ、低い枠は下げる・止める。一本の線で全部を測るのをやめるだけで、予算の配り方が変わります。
まとめ
広告で本当に見るべきは、CVの手前の単価(CPA)ではなく、CVの先(受注率・LTV)まで含めた“割に合うか”です。そこまで紐づけて予算を正しい枠へ配れば、機会損失は小さくなり、広告効果は上がっていきます。
そしてAIは、新しい魔法ではありません。もともと正しかった分析を、細かく・速く・大量に回せるようにする道具です。だからこそ効く。そして最後に「どこへ予算を寄せるか」を決めるのは、いつも人です。