本文へスキップ
AI活用

会計データをAIにMCP連携する|ファイル渡しとの違いと分析の体制

文・編集:ワークデイズ合同会社


AIに会計データを分析させる方法は、大きく二つあります。決算書や元帳をPDF・Excelで書き出してAIに渡す「ファイル分析」と、会計ソフトそのものをAIにつないで直接読ませる「MCP分析」です。私たちは今回、MCP分析で何ができるのか、ファイル分析と何が違うのかを確かめるため、自社の設立から前期決算までの6期分を材料に試しました。結論を先に言うと、違いはデータの新しさではなく、疑問が出た瞬間に元データへ潜れるか・掘り下げられるか・結果が積み上がるかでした。この記事(連載の第1回)では、今回組んだ体制と手順を、具体的にまとめます。

まずMCP分析とファイル分析を比べることにした

いちばん手軽なのはファイル分析です。会計ソフトから決算書のPDFや元帳のExcelを書き出し、AIのチャットに貼り付けて質問する。一期分の内容をざっと読ませて要約させる、といった用途なら、これで十分に実用になります。

ただ、私たちがやりたかったのは、6期分・全物件にわたる分析でした。「この年の利益はなぜ落ちたのか」「この物件は結局いくら残ったのか」と、疑問は次々に枝分かれします。そのたびにファイルを書き出して渡し直すのは現実的ではありません。そこで、会計ソフトと関連書類をAIに直接つなぐMCP分析を用意し、渡しっぱなしではなく、AIの側から必要なデータを取りにいける状態で比べることにしました。

なお、ここでいうMCP連携とは、会計ソフトやクラウドストレージといった外部のツールを、AIが直接読み書きできるようにつなぐ仕組みのことです。大がかりな開発は要りません。ただし、つなぐときの権限の渡し方だけは丁寧にやります。原則は、AIに渡すのはその作業に必要な範囲の権限だけに絞ること——たとえば読み取りだけで足りるなら、書き込みや共有の権限までは渡しません。会計データや契約書のような機微な情報を扱うほど、この「必要な分だけ渡す」が効いてきます。権限を絞ってつないでしまえば、AIが「そのツールの中のデータ」を参照できるようになります。

今回の体制:2つのMCP連携

今回は、性格の違う2つのデータ源をAIにつなぎました。

今回の体制:会計SaaSと書類フォルダの2つをMCPでAIに接続した構成図

つないだ先中身役割
会計SaaS(MoneyForward)仕訳・試算表・決算書(BS・PL)数字の一次データ。集計から個別の仕訳まで直接引ける
クラウドストレージ(Google Drive)各物件の明細・領収書・契約書帳簿の数字を裏づける原本。数字の「なぜ」を確認する

ここで、体制として一番のポイントがあります。Driveのフォルダは、この分析のためにわざわざ作り直したものではありません。決算のときに税理士へ共有するため、もともと物件ごとにまとめてあった書類一式を、そのままAIに参照させただけです。つまり、AIのために新しくデータを整えたのではなく、すでに手元にあるデータの置き場をAIにつないだ——MCP連携を「データの取り出し口・保管庫」として使う形です。これは、これから試す会社にとって現実的な入口だと思います。専用のデータ整備から始めなくても、「いつも税理士に渡している一式」を指し示せば、そこがそのまま分析の材料になります。

AIに歩かせた手順:確定情報と未確定情報を仕分ける

つないだうえで、AIには次の順で作業させました。行き当たりばったりではなく、確認の順路を固定したのが要点です。

分析のワークフロー:会計データを見て書類で裏づけ、確定情報と未確定情報を仕分け、未確定は人に質問して確定させるループ

  1. まず会計データ(MoneyForward)を見る。仕訳や試算表で、その年に何が起きたかの当たりをつける。
  2. その内容を基に、Driveの書類を確認する。数字の裏づけ(契約書・領収書・明細)を突き合わせる。
  3. 確定情報と未確定情報に仕分ける。原本と突き合わせて意味がはっきりするものは「確定」、帳簿と書類だけでは判断できないものは「未確定」として分ける。
  4. 未確定は、私たち(人間)に質問させる。AIに推測で埋めさせず、質問の一覧を出させる。
  5. 不足資料の提出や質問への回答で、情報を確定していく。こちらが答えた内容を反映し、また1へ戻る。

この「未確定なら推測せず質問する」を最初に指示しておくことが、後の精度を大きく左右しました。AIは黙って埋めるのではなく判断を保留し、こちらが一つずつ裁定する——AIに任せ切るのではなく、AIに裁定材料を作らせて、決めるのは人という関係で最後まで回りました。

MCP分析とファイル分析の違い

同じ会計データでも、MCP分析とファイル分析では、できることが変わりました。今回はっきり見えた違いは3つです。

観点ファイル分析MCP分析
疑問が出たとき「その仕訳も送って」と書き出し直し、往復が要る試算表の数字から、その裏の個別仕訳までその場で掘れる
帳簿にまだ無いデータ書き出せない=渡せない銀行連携の未処理明細など、会計処理前のデータも取りにいける
分析の結果チャットが流れると使い捨て台帳に固定でき、毎月同じ問いで更新できる

1つ目は、実際にこう効きました。「6期のどこかで損切りした物件がある。それがどれか」を調べたとき、AIは試算表の集計から個別の仕訳まで下り、摘要(メモ欄)と金額から対象の物件を割り出しました。ファイル分析なら、「その勘定の内訳もください」と資料を追加でやり取りする往復が要ります。MCP分析なら、疑問が出たその場で裏まで潜れます(この特定を含む分析の中身は、第2回で詳しく見ます)。

とくに2つ目は、MCP分析で初めてできたことでした。まだ会計処理していない進行期でも、銀行連携の未処理明細から月末の口座残高を割り出せます。これはファイルには存在しないデータなので、ファイル分析では手が届きません。

それでも、ファイル分析で十分な場面

念のため、正直に線を引いておきます。確定した一期分をさっと読む・要約するだけなら、ファイル分析のほうが手軽です。つなぐ設定の手間もかかりません。MCP分析が効くのは、今回のように反復して見たい・進行期を追いたい・数字を原本まで検証したいときです。目的が「一度きりの読み取り」なのか「積み上げて回す運用」なのかで、選ぶべき道具は変わります。ここを取り違えると、手軽な用途にわざわざMCP分析の設定まで組んで疲れる、という遠回りになります。

日ためすなら

会計ソフトにMCP連携の機能があるなら、大がかりな準備の前に、まず一度つないでドリルダウンを体験してみるのがおすすめです。

  • 直近期の試算表をAIに読ませ、「気になった科目について、その裏の個別の仕訳まで見せて」と頼む。
  • さらに「この仕訳の根拠になる書類はどれか」と、原本の確認まで下りてみる。

ファイル分析で一問一答するのと、MCP分析で掘り下げるのとで、往復の手間がどれだけ違うかが体感できます。細かい設定より先に、この「掘れる感覚」をつかむのが近道です。

まとめ

MCP分析とファイル分析の違いは、データが新しいかどうかではありません。疑問が出た瞬間に生データへ潜れるか、個別の仕訳まで掘れるか、結果が台帳に積み上がるか——この3点です。そして今回の体制で効いたのは、AIのために新しくデータを作らず「税理士に渡す一式」をそのままつないだこと、そして未確定は推測させず質問させる順路を固定したことでした。

次回(第2回)は、この体制で実際に6期分・全物件のポートフォリオをどう分析させ、どんなアウトプットが出てきたのかを、具体的に見ていきます。そして今回の手順の肝だった「未確定は推測させず質問させる」——帳簿に書かれていない情報にどう備えるか——は、連載の第3回で掘り下げます。あわせて、AIに数字を作らせる場面での落とし穴とその防ぎ方はAIの数字はなぜ間違うかにまとめています。

CONTACT

同じような課題、ありませんか?

広告アカウントとアクセス解析を全件精査するWebマーケティングのAI分析を、月3社まで無料で受け付けています。

24時間365日 ご相談受付・月3万円〜

無料で相談する

24時間365日 受付・月3万円〜