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AI活用

AIで不動産の全物件を分析する|利回り・IRR・手残りまで

文・編集:ワークデイズ合同会社


前回は、会計ソフトと書類フォルダをAIにMCP連携し、確定情報と未確定情報を仕分ける分析の体制を組みました。今回はその体制で、実際に何を分析させ、どんなアウトプットが出たのかを見ていきます。題材は、私たちが設立から前期決算までの6年間に購入した全物件です。結論から言うと、AIは物件ごとの「本当の手残り」を組み上げ、利回りやIRR(投じた資金がどれだけの率で回ったかを示す指標)まで算出できました。ただし価値の源は算出の速さではなく、一つひとつの数字を原本まで下りて確かめられることでした。この記事(第2回)では、出てきたアウトプットを手法ごとに具体的にまとめます(金額の実額は伏せ、やり方と出力の形に絞ります)。

何を出させたか:物件ごとの「本当の手残り」

まず狙いを、会計上の利益ではなく、物件ごとの「本当の手残り」を出すことに置きました。売却物件なら「どこで、どれだけ残ったのか」、保有物件なら「今どれだけ残っているのか」を、物件ごとに出すことです。

物件ごとの「本当の手残り」の構成:売却損益と賃料から、税金・利息・管理費・取得諸費用を差し引く

手残りは、次の要素をすべて突き合わせて初めて出ます。会計ソフトの科目をまたぐため、決算書を眺めるだけでは物件単位で見えてきません。

加える(入ってきたお金)引く(出ていったお金)
売却損益(売却物件)税金
賃料収入(保有期間の累計)借入の利息
管理費・運営費
取得にかかった諸費用

AIには、会計データ(仕訳・補助科目)と書類(契約書・明細)を突き合わせて、これらを物件ごとに集計させました。売却済みの物件は「どこで利益が出て、最終的にいくら残ったか」、保有中の物件は「取得からここまでで今いくら残っているか」を、一覧にできます。

損切りした物件も、手残りで見直す

6期のどこかで損切りした物件がありました。AIは試算表から個別の仕訳まで下りて、摘要(メモ欄)と金額から、それがどの物件かを特定します(この特定がファイルを渡すより速くなる仕組みは、第1回で触れました)。

特定はゴールではなく、入口でした。売却時の損益だけを見れば「損切り=マイナス」で話は終わります。しかし、保有していた期間の賃料まで含めて手残りを組み直すと、同じ物件でも成績の見え方が変わります。会計上の損益と、賃料まで含めた手残りは別物です。売却時の数字だけでは「損」に見えた物件が、保有中の賃料まで通すと実際どうだったのか——これを物件ごとに突き合わせられることが、この分析の主眼でした。

進行期の数字は、突き合わせながら確定させる

数字の確からしさは、期によって前提が違います。決算が閉まった期は、すでに税理士が目視でチェックし、承認しています。ここは信頼できる土台です。一方で、まだ決算が終わっていない進行期は、税理士の確認前——リアルタイムのデータです。そのままでは、正しさを保証してくれる人がいません。

そこで進行期は、参照元の違う情報から同じ数字にたどり着けるかで確かめました。たとえば月末の口座残高は、会計ソフトの銀行連携の明細からも、通帳の記録からも割り出せます。別々のAIに、別々の参照元から集計させ、結果を突き合わせる——こうして、確認前の期でも数字を一つずつ確定させていきます。帳簿にまだ載っていない進行期の数字にも手が届くのは、AIをデータへ直接つないでいるからでした。

利回り・IRRまで出す。そして必ず検算する

物件ごとの収入と支出がそろえば、利回りやIRRまで計算できます。AIにはここまで出させました。

ただし、数字そのものはAIに“作らせて”そのまま採用はしません。計算のもとになった賃料・経費・借入の内訳を、原本や独立した記録と突き合わせてから確定させます。指標が一人歩きすると、桁や前提のずれに気づけないためです。AIに数字を任せるときの落とし穴とその防ぎ方は、連載の第3回で詳しくまとめます。数字を“作らせる”場面の対策はAIの数字はなぜ間違うかにもまとめています。

これらをそろえると、物件ごとに次のような一覧ができあがります。取得から売却(または現在)までの期間、賃料の累計、経費の内訳、手残り、そして利回り・IRRが、一件ずつ並びます。

出てきたアウトプット:物件ごとに取得〜売却・保有期間、賃料累計、経費内訳、本当の手残り、利回り・IRRが並ぶ一覧

見えてきたこと:売買より、保有中の賃料

6期分をこうして並べると、私たち自身について一つの傾向が数字で見えました。物件の売買そのもの(買って売る差益)は通算でマイナス、実際に稼いでいたのは保有中の賃料だった、ということです。感覚としては分かっていたことが、全物件・全期間の手残りとして数字でも裏づけられました。

念のため添えておくと、これは私たちの6年間の実データで見えた傾向であって、一般論でも投資の助言でもありません。物件の条件も時期も会社ごとに違うため、そのまま他社に当てはまるものではない、という前提でご覧ください。

日ためすなら

いきなり全物件でなくてかまいません。1物件だけで試すのが、手応えをつかみやすい方法です(不動産でなくても、物件を自社の案件や商品に置き換えれば、考え方は同じです)。

  • 1つの物件について、購入から現在(または売却)までの賃料・経費・税金・借入利息を、AIに1枚にまとめさせる。
  • そのうえで「取得諸費用まで含めた手残りはいくらか」を出させ、会計上の利益との差を確認する。

会計上は黒字でも、諸費用まで引くと手残りは違って見える——この差に気づけると、物件ごとの実像がつかめます。まとめさせた数字は、必ず契約書や明細の原本と突き合わせてから信じてください。

まとめ

MCP連携したAIは、物件ごとの「本当の手残り」を組み上げ、損切り物件の特定から利回り・IRRの算出、進行期の残高復元までこなしました。会計上の利益では見えない物件単位の実像が、6期分そろって並びます。ただし、それが判断に使えるのは、一つひとつの数字を原本まで下りて確かめられるからです。次回(第3回)は、この分析の途中で出会った落とし穴——帳簿に書かれていない情報がAIの誤りを生む場面——と、その防ぎ方をまとめます。

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