既存コンテンツをAIで動画化し新しい資産に|文字で届かなかった層へ
文・編集:ワークデイズ合同会社
ブログや技術コラムを書きためてきた会社には、動画の中身がもうあります。文章で出してきた記事を動画に作り変えれば、新しい資産になり、文章では届かなかった層への入口になる。私たちはそう考えています。
私たちは2026年10月から、自社のコラムを Claude で動画にして、YouTube に上げ始めました。撮影も顔出しもしていません。人の手でかかる時間は、1本目が約3時間、2本目からは約15分の見込みです。
この記事では、なぜ動画にするのか、作り方をどう選んだか、出すにあたって何を確かめたかを書きます。
記事は「調べて来た人」にしか届かない
まず、私たちの状況から書きます。
このコラムは、Google で AI のことを調べた人が、検索結果から記事を開いてたどり着く作りになっています。逆に言えば、調べていない人には、どれだけ書いても届きません。
調べてたどり着く人の数も、正直に言って多くありません。
動画なら、届き方が変わります。YouTube には検索のほかに、ホーム画面のおすすめ、見ている動画の横や下に出る関連動画、縦型の短い動画(ショート)が続けて流れる画面があります。検索していない人にも、こちらから届く入口です。
もう1つ、文章で読む人と、動画で見る人は、媒体の性質が違うので、もともと層が違うと考えています。記事のままでは届かない人がいる、ということです。
ここで、AI が変えたものと、変えていないものを分けておきます。おすすめで動画が届く仕組みは、生成 AI が広まる前から YouTube にあります。変わったのは、作る側の手間と費用です。撮影や編集の技術がなくても、書いた記事から動画が作れるようになりました。
ただし、本当に届くかどうかはまだ分かりません。チャンネルを開いたのは2026年10月14日です。届いたかどうかは、YouTube アナリティクス(YouTube の分析画面)の「トラフィック ソースの種類」を見て判断します。視聴者が動画をどこで見つけたか、検索か、ホーム画面のおすすめか、関連動画か、が分かる画面です。
Claude は動画を「生成」しない。プログラムを書いて1コマずつ描く
「Claude で動画は作れるのか」と聞かれたら、答えは「作れる。ただし、Claude が映像そのものを生み出すわけではない」です。
私たちが使ったのは Claude Code です。Claude にプログラムを書かせるだけでなく、それを動かすところまで任せられる道具です。動画を作るプログラムを書かせて、動かしています。Claude Code を自分の PC ではなくクラウドで動かす使い方は、Claude Codeはクラウドセッションでに書きました。
できあがる動画は、図や文字が言葉に合わせて動く解説動画に、合成音声のナレーションと字幕が付いたものです。1本の記事から、横長の本編を1本と、ショートを3〜6本作っています。
流れは次のとおりです。
いちばん大事にしている決まりは、動画で記事にない主張を足さず、記事の主張を落とさないことです。公開した記事の中身は、出すときに確かめています。動画で中身を変えなければ、事実の確認をやり直さずに済みます。人が動画で見るのは、記事の中身が正しいかではなく、記事どおりに伝わっているかです。聞き取れるか、見えるか、です。
最初からこの形だったわけではありません。1本目は、図を順に見せていくスライドショーに近いものでした。それを見て、もっと動きのある形に作り直しました。図や文字が、言葉に合わせて動く形です。声も、最初の候補は切羽詰まった感じに聞こえたので、落ち着いた声に替え、抑揚の強さを4段階で聞き比べて決めています。
ここから少し細かい話です。仕組みの中身に関心がなければ、次の見出しまで読み飛ばしても構いません。
- 声:AivisHub で公開されている声のモデルを、無償の音声合成のソフトで動かしています。読み方は「AI→エーアイ」のように指定できます。
- 動き:図や文字の動きは、GSAP というアニメーションの部品で書いています。商用でも無償で使えます。同じ用途でよく名前が挙がる Remotion は、社員4人以上の会社では有料のライセンスが要ります。
- 書き出し:ブラウザの画面を1コマずつ撮り、ffmpeg(動画をつなぐ・変換する無償のソフト)で1本にまとめています。同じ音声と同じプログラムからは、毎回同じ映像ができます。
- 聞き取りの確認:読み上げた音声を、もう一度文字に書き起こし、台本と照合しています。
道具は「作った費用をどこで回収するか」で選んだ
道具選びで決め手になったのは、課金の形でした。
私たちは広告の仕事で、動画生成 AI をよく使っています。文章や画像から映像を生み出す AI で、私たちが使っているものは、作るたびに費用がかかります。それでも、私たちの広告の仕事では成り立っています。作った動画は広告費をかけて配信し、成果で良し悪しを確かめるので、制作費で赤字にならない立て付けになっているからです。広告の動画で、生成 AI で作った動画を実写の動画と、AI のナレーションを人のナレーターの声と比べた話は、AIっぽい広告は成果が落ちるのかに書きました。
情報発信のために、自社のコンテンツとして出す動画は違います。1本ごとに費用をかけて作ると、費用対効果が合わない可能性があります。そこで、作るたびに費用が増えない作り方を選びました。Claude Code は、私たちが払っている Claude の定額の料金(サブスクリプション)の範囲で使えます。長い動画を作っても、1本ごとの料金はかかりません。
ただし、定額でも使い放題ではありません。Claude の有料プランには、5時間ごとと1週間ごとの利用上限があり、チャットで使う分も Claude Code で使う分も、同じ上限に数えられます。「定額の範囲で」とは、この上限の内側で、という意味です。
あなたの会社が動画を何に使うかで、合う作り方は変わります。制作会社や広告代理店が受託で作る動画や、ブランディング・広告の動画は、費用をかけて発信する動画です。ある程度かけても回収できるので、作るたびに課金される道具でも成り立つと考えています。情報発信の動画なら、できるだけ費用を抑え、1本ごとの費用が増えない作り方のほうが続けやすいと見ています。
人の手は、1本目で約3時間。2本目からは約15分の見込み
人がやったこと、これからやることは、次のとおりです。
| 1本目 | 2本目から(見込み) | |
|---|---|---|
| 人の手でかかる時間 | 約3時間 | 約15分 |
| 人がやること | 動画の確認/YouTube まわりの設定/Claude の設定/自動化の設定 | 本編(約8分)とショート(約1分を3〜6本)の台本・タイトル・サムネイル・完成した動画を、まとめて1回、目で確かめる/公開の前に YouTube Studio で見直し、終わりの画面を付ける |
| AI とプログラムがやること | 台本・場面・声・書き出し・機械の確認 | 1本目と同じ。加えて、予約公開でのアップロードとサムネイルの設定 |
この時間に、AI が作業していた時間は入っていません。
2本目からは、人が手を動かすのは主に2つになる見込みです。1つは、本編とショートを、まとめて1回、目で確かめることです。もう1つは、公開までに YouTube Studio(YouTube の管理画面)で見直し、終わりの画面(動画の最後に「次の動画」や「チャンネル登録」を出す枠)を付けることです。YouTube を外から操作する仕組み(API)には、終わりの画面を設定する項目が見当たらないので、ここは手で付けています。
1本目の約3時間は、動画の確認だけでなく、YouTube まわりの設定や、Claude と自動化の設定に使いました。この3時間で、週に約15分の手間で、本編を週1本、ショートを週3〜6本出せる体制を作りました。
人の手は、月に1時間ほどの計算です。撮影や編集を外に頼む場合と比べてどうかは、会社によって違うので、ここでは比べません。この程度の時間なら、毎週続けられる見込みです。
機械に確かめさせること、人が見ること
確認は「気をつける」で済ませず、できるだけ機械に任せています。機械に任せられないものだけを、人が見ます。
機械に確かめさせているのは、次の3つです。
- 聞き取れるか:読み上げた音声を文字に書き起こし、台本と照合します。一致の度合いが低い行は、Claude 上のエージェントが台本を直します。ひらがなにする、読点を入れる、意味が変わらないように言い換える、といった直し方です。
- 見えるか:各行の終わり際の静止画を書き出し、文字のはみ出しをプログラムが検査します。並べた静止画は、AI も見て確かめます。
- 形式が合っているか:書き出した動画の形式・コマ数・音量・字幕の重なりを検査し、合格するまで人に渡しません。
人も、できあがった動画を目で見て確かめています。ただ、いまのところ戻すことはあまりありません。記事を書く段階でかなり作り込んでいて、世に出せる水準の記事が、そのまま台本になっているからです。
1本目では、次のことが起きました。どれも、いまの決まりのもとになっています。
| 起きたこと | 原因 | いまの決まり |
|---|---|---|
| YouTube に上げると、11秒付近の映像が冒頭の場面に入れ替わった(手元のファイルは正常) | 容量を減らすために選んだ動画の形式が、YouTube が勧める形式から外れていた、と見ている(YouTube 側の変換の中身は確かめられないので推測) | YouTube に上げるファイルの形式を固定する。上げたあと、YouTube で再生して確かめる |
| 「AI」が「出会い」と聞こえた | この声は、間のあとの「エ」の音が弱い | 「AI」を文の頭や読点の直後に置かない |
| 白い背景に白い文字が出た/図が字幕の帯に隠れた | 場面ごとの配置の見落とし | 全部の行の終わり際の静止画を並べて見る |
表の1つ目は、手元のファイルを見ているだけでは見つかりません。上げた先で再生して初めて分かることでした。YouTube は、上げた直後は低い画質で流し、高い画質の処理はあとから終わります。いまは高い画質に切り替わってから、入れ替わりが起きた10〜15秒あたりと全体を見直しています。
音声を文字に起こして使うやり方は、広告の動画の分析でも使っています(広告クリエイティブをAIで分析する)。確認を、頼むだけで終わらせず「関所」と「点検」に置く考え方は、AIが指示を守らないのはなぜかに書きました。
出すにあたって確かめたこと
AI で作った動画を会社のチャンネルで出すにあたって、3つ確かめました。
AI を使ったことを開示するか
YouTube で開示が要るのは、本物と見間違えるような内容です。たとえば、実在の人が言っていないことを言ったように見せる、起きていない出来事をリアルに作る、といったものです。台本・サムネイル・図解に生成 AI を使うだけなら、開示は要りません。
私たちの動画は図解と合成音声のナレーションです。声のモデルは実在の方の声から作られていますが、その方が話しているように見せるものではないので、開示は「なし」と判断しました。ほかの人の声から作った合成音声がどちらに当たるかは YouTube の説明に直接はないので、ここは私たちの判断です。
声のライセンス
使った声のモデルのライセンス(ACML 1.0)は、営利の利用も認めています。ただし、誇大な表現の宣伝や、実在の人・団体・商品への批判などには使えません。
このコラムは、もともと他社の批判や誇大な表現をしない方針で書いています。それでも、記事の中身によってはこの声を使えない場合がある、ということです。合成音声の声のモデルは、営利に使えるかどうかだけでなく、何に使えないかもモデルごとのライセンスで決まります。見落としやすいところです。
量産型と見なされないか
YouTube では、独自の視点が加わっていない、汎用的なテンプレートで量産したような AI の動画は、収益化の対象外です。
私たちは収益化はしていません。そのうえで、1本ずつ自社の記事から作っています。背景・字幕・タイトルと終わりの画面は共通の型ですが、本文の場面は記事ごとに作っています。
明日からできること
自分の会社で試すなら、この4つからです。
- 記事を1本だけ選ぶ:検索でよく表示されている記事から選ぶと、関心を持たれていると分かっている中身から始められます。私たちも、Search Console(Google 検索での表示やクリックを見られる Google の無料の道具)で、表示回数の多い順に動画にしています。
- 選んだ記事を AI に渡して、簡単に頼んでみる:普段使っている AI に記事を渡し、「この記事を動画にして。ナレーションを付けて、分かりやすく」と頼みます。簡単な依頼だけで、動画がひとまずできあがります。そこから「どういう動画にしたいか」を伝えていけば、自分の会社に合った動画にできます。
- 台本を、元の記事と並べる:足された主張と、落ちた主張がないかを確かめます。動画の中身が記事と食い違っていないかを見る、いちばん安い確認です。
- 作り方は、費用をどこで回収するかで選ぶ:受託で作る動画や、ブランディング・広告の動画なら、作るたびに課金される道具でも成り立つ場合があります。情報発信の動画なら、作るたびに費用が増えない作り方を選びます。どちらでも、上げる前に声のライセンスと開示の要否を確かめます。
まとめ
ブログやコラムを書いてきた会社は、動画にする中身をもう持っています。まずは、記事を AI に渡して簡単に頼むだけで、1本できあがります。私たちが動画にしたのは、記事が「調べて来た人」にしか届かず、検索していない人に届く入口がほしかったからです。
作り方は、作った費用をどこで回収するかで選びました。情報発信の動画なので、定額の範囲で作れる Claude Code にしています。人の手は1本目で約3時間、2本目からは約15分の見込みで、残りは AI とプログラム、そして機械の確認に任せています。
届いたかどうかは、まだ分かりません。数字が出たら、視聴者が動画をどこで見つけたかを見て判断します。